神社神道余話じんじゃしんとう よわ
宮司がたどる、神社と神道の「なぜ」
令和8年9月15日号
第4回
例祭とはどのようなお祭りでしょうか?
―神社で最も大切な祭典―
神社の祭典案内で目にする「例祭」という言葉。毎年行われる祭典でありながら、その神社にとって最も大切な祭典とされています。例祭の日の決まり方や、「例大祭」「大祭」「秋祭」「神幸祭」との違いを、参拝者と宮司の対話から考えます。
例祭とは何でしょうか

境内の案内で「例祭」という言葉を見かけました。「例」という字が付くので、いつものお祭りという意味でしょうか?

「例」には、毎年決まって行うという意味があります。ただし、例祭は数ある恒例祭の一つにすぎないということではありません。それぞれの神社にとって、一年で最も重要な祭典です。

毎年行われる祭典の中でも、特別なものなのですね。

はい。神社本庁の説明では、例祭は神社の鎮座の日や、御祭神に特に縁の深い日などに行われる祭典で、「大祭」に区分されます。神さまに日頃の御神恩を感謝し、皇室の弥栄、国と地域の安泰、氏子崇敬者の平安などを祈ります。具体的な祈願の内容や祭典の形は、神社によって異なります。
一番にぎやかな祭りという意味ですか

「最も重要な祭典」ということは、屋台が並び、大勢の人でにぎわう一番大きなお祭りということでしょうか?

必ずしも、参拝者の人数や催しの規模を指すわけではありません。例祭の中心にあるのは、御神前で行う祭典です。神饌と呼ばれるお供え物を奉り、祝詞を奏上し、玉串を奉って、神さまに感謝と祈りを申し上げます。神社によっては、神楽や舞などが奉納されます。

屋台や芸能、地域行事なども祭りを形づくる大切な要素ですが、それらがなければ例祭にならないわけではありません。にぎわいの大小にかかわらず、御神前の祭典が大切に斎行されることが基本です。

例祭の日は、どのように決まるのでしょうか

例祭の日は、全国の神社で同じなのでしょうか?

同じではありません。神社の鎮座や御祭神に縁のある日を祭日とする神社もあれば、農耕の節目や季節、地域の歴史と結び付いた日を祭日としてきた神社もあります。春に行う神社も、秋に行う神社もあります。

昔からの日付を、現在も変えずに守っているのでしょうか?

古くからの祭日を守っている神社がある一方、氏子が参列しやすいよう、社会や地域の事情に応じて土曜日や日曜日に移した神社もあります。祭日の由来や変更の経緯が記録に残っていない場合もありますので、すべてを一つの理由で説明することはできません。
例祭・例大祭・大祭・秋祭の違い

「例祭」のほかに、「例大祭」や「秋祭」という言い方も聞きます。別のお祭りなのでしょうか?

「例大祭」は、例祭が大祭に区分されることから用いられる呼び方で、多くの場合は例祭と同じ祭典を指します。ただし、神社ごとに正式な祭典名がありますので、その神社の案内に従うのがよいでしょう。

「大祭」は祭典の区分を表す言葉です。例祭のほか、祈年祭や新嘗祭なども大祭にあたります。そのため、すべての大祭が例祭というわけではありません。

「秋祭」は、秋に行われる祭りを表す一般的な呼び方です。秋に例祭を行う神社では、例祭を秋祭と呼ぶことがあります。一方、春に例祭を行う神社もありますので、例祭と秋祭が必ず同じになるわけではありません。
神幸祭も例祭なのでしょうか

神輿が地域を巡る「神幸祭」も、例祭の一部なのでしょうか?

神幸祭は、神さまに神輿などへお遷りいただき、氏子地域を巡っていただく祭典です。例祭に伴って行われることがありますが、例祭とは別の祭典として斎行する神社もあります。また、すべての神社の例祭に神幸祭や神輿渡御があるわけではありません。

地域で「お祭り」と呼んでいるものの中に、いくつかの祭典や行事が含まれていることもあるのですね。

そうです。地域によっては、宵宮、例祭、神幸祭、神輿渡御、奉納行事などを合わせて、一つの「秋祭」や「例大祭」と呼ぶことがあります。どこまでを一つの祭りと捉えるかは、神社や地域によって異なります。

氏子や総代は、どのように関わりますか

例祭は、神職だけで行うものではないのでしょうか?

祭典は神職が奉仕しますが、例祭は神職だけで成り立つものではありません。総代が氏子を代表して参列し、氏子や崇敬者が祭りを支えます。清掃、幟旗や提灯の設置、神輿の準備、行列の奉仕など、関わり方は神社や地域によってさまざまです。

前回までに取り上げた氏子と総代の役割が、目に見える形で表れる機会の一つが例祭だともいえます。ただし、氏子全員が同じ仕方で参加するわけではなく、祭りを支える組織や慣習にも地域差があります。
まとめ
例祭は、それぞれの神社で毎年行われる、最も重要な祭典です。祭日の由来や季節、祭典の形は神社によって異なりますが、御神前に神饌を奉り、日頃の御神恩に感謝し、国や地域、氏子崇敬者の安泰を祈ることが中心にあります。
例祭に伴って神幸祭や神輿渡御、奉納行事などが行われることもあります。しかし、にぎわいや催しの規模だけで祭りの大切さが決まるのではありません。御神前で祭典を斎行し、氏子崇敬者と共に神さまをお祀りすることが、例祭の根幹です。
稲荷神社では
ここからは、一般的な説明とは分けて、当社における例祭の実際をご紹介します。
稲荷神社では、例祭を「秋季大祭」として斎行しています。古くは10月14日と15日を祭日としていましたが、現在は、10月第2日曜日とその前日の土曜日に行っています。旧来の祭日がなぜ10月14日と15日に定められたのか、詳しい由来は確認できていません。
土曜日の例祭では、皇室の弥栄、国家国民の安寧、氏子地域の発展を祈願します。例祭を終えると「遷御」を行い、稲荷大神に神輿へお遷りいただき、翌日の神幸祭に備えます。
日曜日の神幸祭では、稲荷大神にお遷りいただいた神輿と共に行列を組み、氏子区域を巡ります。当社の社史によれば、この神輿渡御は安政3(1856)年に始まったと伝えられています。その後、明治期と昭和期に中断しましたが、昭和50(1975)年に復活しました。
祭典の準備や神輿行列は、総代をはじめ、氏子の皆様の協力によって支えられています。当社においても、例祭は御神前の祭典であると同時に、稲荷大神と氏子地域とのつながりを確かめ、次の世代へ受け継いでいく機会となっています。

当社の例祭と神幸祭については、「秋季大祭(例祭・神幸祭)」のページでもご案内しています。
参考にした主な資料
- 「恒例祭」神社本庁公式サイト
- 「神社のお祭りとは」神社本庁公式サイト
- 『神社の豆知識』「例祭(れいさい)はどんな日を選んで執り行われるのですか」東京都神社庁公式サイト
- 「カミ・人・祭りの原風景~神社のことば事典~(82)まつり【祭・祀】(一)」(『山陰中央新報』令和7年6月19日掲載)
※祭日の由来、祭典の名称や構成、氏子・総代の関わり方などは、神社や地域によって異なります。
※本文の対話は、実際に寄せられた質問や一般に抱かれる疑問をもとに、内容を整理・再構成しています。
執筆・監修:稲荷神社宮司
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