神社神道余話じんじゃしんとう よわ
宮司がたどる、神社と神道の「なぜ」
令和8年11月1日号
第7回
明治祭とはどのようなお祭りでしょうか?
―明治天皇の御聖徳を仰ぎ、国の発展を祈る祭典―
11月3日は「文化の日」として知られていますが、多くの神社では、この日に「明治祭」が斎行されます。同じ日であることには歴史的なつながりがありますが、明治祭と文化の日は同じものではありません。今回は、明治祭に込められた祈りと、11月3日が歩んできた歴史をたどります。
明治祭は11月3日の祭典です

11月3日に稲荷神社へ伺うと、「明治祭」という祭典の案内がありました。どのようなお祭りなのでしょうか?

明治祭は、明治天皇の御誕生日にあたる11月3日に斎行される祭典です。明治天皇の御聖徳を仰ぎ、皇室の弥栄、国の発展、文化の振興、産業の増進、そして平和を祈ります。

「御聖徳を仰ぐ」とは、どのような意味でしょうか?

「御聖徳」とは、天皇のお人柄やお働きによって示された徳を敬っていう言葉です。明治祭では、明治天皇が国の歩みを導かれた御事績をしのび、その後の平安と発展を神前で祈ります。

なぜ11月3日なのでしょうか

明治天皇の御誕生日が11月3日だったのですね?

はい。明治天皇は嘉永5年9月22日、新暦では1852年11月3日にお生まれになりました。明治時代には、天皇の御誕生日を祝う「天長節」として11月3日が祝われていました。

天長節は、現在の天皇誕生日にあたるのですか?

おおむね、そのように考えると分かりやすいでしょう。天長節の日付は、その時代の天皇の御誕生日に応じて変わるため、大正時代になると11月3日は天長節ではなくなりました。
「明治節」とは何ですか

では、「明治節」という呼び名はいつから始まったのでしょうか?

昭和2(1927)年に、11月3日が「明治節」と定められました。明治天皇の御遺徳を仰ぎ、明治の時代を振り返る日とされたものです。

明治天皇の御誕生日だった日が、後に明治節となったのですね?

その通りです。ただし、明治節は戦前の祝日に関する制度のもとで定められたもので、現在の国民の祝日とは制度が異なります。時代による違いを分けて考えることが大切です。
文化の日と明治祭は同じものですか

現在の11月3日は文化の日です。明治節が、そのまま文化の日になったのでしょうか?

日付は受け継がれていますが、「そのまま名称だけが変わった」と説明するのは正確ではありません。文化の日は、昭和23(1948)年に制定された国民の祝日で、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日とされています。

同じ11月3日でも、文化の日と明治祭では意味が違うのですね?

はい。文化の日は法律で定められた国民の祝日であり、明治祭は神社で行われる祭典です。歴史的なつながりを持つ同じ日ですが、現在の位置づけと目的は区別して理解するのがよいでしょう。

明治神宮だけのお祭りですか

明治天皇をお祀りする明治神宮だけで行われるお祭りなのでしょうか?

いいえ。明治神宮では11月3日に例祭が斎行されますが、明治祭は各地の神社でも恒例の祭典として行われています。神社本庁の説明では、大祭・中祭・小祭という祭典区分のうち「中祭」にあたります。

それぞれの神社では、その神社の神様に祈るのですか?

一般には、それぞれの神社で祭典を行います。ただし、斎行の仕方や参列の案内などは神社によって異なり、すべての神社で同じ形により行われるとは限りません。
明治祭では何を祈るのでしょうか

明治時代を振り返るだけでなく、現在や未来のことも祈るのでしょうか?

はい。明治天皇の御事績をしのぶとともに、皇室の御繁栄、国や人々の安寧、産業と文化の発展、そして平和を祈ります。過去を懐かしむだけではなく、受け継いできた歩みを確かめ、これからの世の平安を願う祭典といえるでしょう。

明治という時代を、一つの見方だけで評価するお祭りなのでしょうか?

明治祭は、歴史上の出来事に唯一の評価を定めるためのものではありません。社会が大きく変化した時代の歩みを背景に、明治天皇の御聖徳と御事績を仰ぎ、今日の暮らしと国の将来に思いを向ける神社の祭典です。
まとめ
明治祭は、明治天皇の御誕生日である11月3日に、御聖徳と御事績を仰ぎ、皇室の弥栄、国と人々の安寧、産業・文化の発展、平和を祈る祭典です。
11月3日は、明治時代には天長節、昭和2年からは明治節とされ、戦後は文化の日となりました。ただし、文化の日は国民の祝日、明治祭は神社の祭典であり、現在の制度と目的は同じではありません。日付の歩みを知ることによって、秋の一日が持つ幾つもの意味が見えてきます。
稲荷神社では
稲荷神社では、毎年11月3日に明治祭を斎行し、明治天皇の御聖徳を仰ぐとともに、皇室の弥栄、国家国民の安寧、諸産業と文化の振興をお祈りしています。祭典への参列は、どなたでも可能です。
また、当社では明治祭にあわせて「秋季奉納奉告祭」を斎行します。これは、氏子崇敬者の皆様から寄せられた奉納について、感謝を込めて稲荷大神へ奉告する祭典です。神社への奉納は、品物を納めて終わるものではなく、その志を神様へ丁寧に申し上げることも大切にしています。

明治祭・秋季奉納奉告祭の日時については、祭典と神事、境内掲示、公式Instagramなどでご案内します。
参考にした主な資料
※本文の対話は、実際に寄せられた質問や一般に抱かれる疑問をもとに、内容を整理・再構成しています。
執筆・監修:稲荷神社宮司
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