神社神道余話じんじゃしんとう よわ
宮司がたどる、神社と神道の「なぜ」
令和8年9月1日号
第3回
総代とは何をする人でしょうか?
―神社と地域を結ぶ世話役―
神社のお祭りでは、「総代」と呼ばれる方々が準備や運営に携わっています。
祭典に参列し、境内を整え、神社と地域との連絡役を務めるなど、その仕事はさまざまです。しかし、神職とは何が違うのか、誰が総代を選ぶのか、責任役員とは同じなのかなど、外からは分かりにくいところもあります。
前回、氏子について話していたとき、参拝の方から、このような質問を受けました。

氏子の中でも、特に神社を支える人を「総代」と呼ぶのですか?

一般には、氏子や崇敬者を代表して、宮司に協力し、神社を支える方々を総代と呼びます。「氏子総代」や「神社総代」という言い方もあります。

神社の役員ということですか?

広い意味では神社を支える役職ですが、宗教法人法上の「責任役員」とは別のものです。この違いは、後ほど説明しましょう。
総代という名称は比較的新しいものです

総代という役職は、昔からあったのでしょうか?

現在のような「総代」という名称が広く用いられるようになったのは、主として明治以降と考えられています。その意味では、名称そのものは比較的新しいものです。

それ以前には、神社を支える人はいなかったのですか?

いいえ。神社の祭りを支え、地域の人々をまとめる役目を担う人は、古くから存在しました。地域によっては「宮座」や「頭屋」「当屋」などと呼ばれる仕組みがありました。

宮座や頭屋とは、どのようなものですか?

宮座は、一定の家々や地域の人々が組織をつくり、神社の祭りを担う仕組みです。頭屋や当屋は、その年の祭りを担当する家や人を指します。ただし、その名称や役割は地域によって異なります。

昔からあった世話役の役割が、近代になって総代という形へ整えられたのですね。

そのように考えると分かりやすいでしょう。ただし、昔の宮座や頭屋が、そのまま現在の総代になったとは限りません。それぞれの神社や地域の歴史を確認する必要があります。

総代は何をする人ですか

総代には、具体的にどのような仕事がありますか?

神社によって異なりますが、祭りの準備や参列、境内の清掃、社殿や境内の維持、神札の頒布、氏子の方々への連絡などがあります。

ずいぶん幅広いですね。

はい。社殿の修繕などが必要になったときには、氏子の方々へ説明し、協力を呼びかけることもあります。また、地域の意見や事情を宮司へ伝えることも、大切な役割です。

宮司と氏子の間を取り持つ役目もあるのですね。

そうですね。総代は、神社と地域を結ぶ世話役といえます。ただし、総代だけで神社を維持するのではなく、氏子や崇敬者の皆さまの協力を得ながら務めます。

総代と宮司はどのような関係ですか

総代は、宮司よりも上の立場なのでしょうか?

総代を宮司の上司と考えるのは適切ではありません。反対に、宮司が総代を単なる作業員のように考えることも適切ではありません。それぞれ役割が異なります。

宮司には、どのような役割があるのですか?

宮司は、神社に奉仕する神職の長として、神さまをお祀りし、祭祀をつかさどります。神社本庁の一般的な説明では、総代は、神社の祭祀、信仰、伝統を守り伝えるために宮司へ協力する立場です。

宮司が一人で決め、総代はそれに従うだけでもないのですね。

はい。宮司には祭祀と社務を担う責任があり、総代には氏子や崇敬者を代表して協力する役割があります。互いの立場を尊重し、相談しながら神社を守ることが大切です。
総代と責任役員は同じではありません

総代は、宗教法人としての神社を運営する役員でもあるのですか?

「総代」と「責任役員」は、区別して考える必要があります。宗教法人法では、宗教法人に三人以上の責任役員を置き、そのうち一人を代表役員(神社の場合は宮司)とすることが定められています。

責任役員は何をする人ですか?

責任役員は、神社の規則に基づいて、予算、決算、財産の管理など、宗教法人の事務を決定します。代表役員は宗教法人を代表し、その事務を総理します。

総代には、そのような法律上の権限はないのですか?

総代という名称だけで、宗教法人法上の権限が生じるわけではありません。ただし、総代と責任役員を兼ねる人もいます。その場合は、責任役員として法人の事務を決定する権限と責任を負います。

総代会で重要なことを決める神社もありますか?

神社の規則によっては、総代会に一定の役割を定めている場合があります。そのため、総代会の権限や責任については、それぞれの神社の規則を確認しなければなりません。
総代はどのように選ばれますか?

総代は、選挙で選ばれるのでしょうか?

選び方は神社によって異なります。氏子や崇敬者から推薦を受けるところ、地域ごとに選ぶところ、宮司が選任するところ、役員会などの手続きを経るところがあります。

全国共通の選び方があるわけではないのですね。

はい。人数、任期、選任方法などは、それぞれの神社の規則や慣例によって異なります。一般には、氏子や崇敬者から信頼され、神社の祭りや伝統を大切にする方が選ばれます。

地域の有力者でなければ、総代にはなれないのでしょうか?

社会的な肩書や財産だけで決まるものではありません。大切なのは、神社を敬い、氏子や崇敬者のために誠実に奉仕し、周囲から信頼されていることです。
総代は名誉職なのでしょうか?

総代は、名前だけを連ねる名誉職なのでしょうか?

神社によって活動の程度は異なりますが、本来は肩書だけの役ではありません。祭りや神社の維持に関わり、氏子や崇敬者と宮司との間を結ぶ、実際の奉仕を伴う役目です。

総代が神社を自分の考えどおりに動かす、というものでもないのですね。

そのとおりです。総代は神社や氏子を私的に支配する立場ではありません。宮司、責任役員、ほかの総代、氏子崇敬者と協力し、神社の祭りと伝統を次の世代へ受け継ぐために奉仕する立場です。
神社と地域を次の世代へつなぐために

総代は、神社と地域の間に立つ大切な役なのですね。

はい。宮司だけでは、地域のすべての事情を知ることはできません。氏子の声を伝え、地域の人々へ神社の祭りや考えを伝える総代の存在は、とても大切です。

これからは、総代のなり手を見つけることも難しくなりそうですね。

少子高齢化や生活様式の変化によって、負担が一部の人へ偏らない工夫も必要です。役割を分かりやすくし、できることを分担しながら、地域全体で神社を支えていくことが大切でしょう。
まとめ
総代とは、一般に、氏子や崇敬者を代表し、宮司に協力して神社の祭り、信仰、伝統を守り伝える人のことです。
現在の「総代」という名称が広く使われるようになったのは主として明治以降ですが、神社の祭りを支え、地域の人々をまとめる世話役は、それ以前からさまざまな形で存在しました。
総代の役割、人数、任期、選び方は、神社によって異なります。また、総代と宗教法人法上の責任役員は同じではありません。総代を兼ねる責任役員もいますが、それぞれの立場と責任を区別して考える必要があります。
総代は宮司の上司でも、神社を私的に動かす人でもありません。宮司、責任役員、氏子崇敬者と協力しながら、神社と地域を次の世代へつなぐ世話役といえるでしょう。
稲荷神社では
ここからは、一般的な説明とは分けて、当社における総代の実際をご紹介します。
稲荷神社では、氏子区域を大きく三つの地区、さらに十三の地域に分け、それぞれの地域から一人または二人、計二十二人の総代が選ばれています。総代は宮司が任命するのではなく、それぞれの地域で推薦・選出されています。
任期は原則として二年ですが、一年ごとに交代する地域もあり、選び方や在任期間は一様ではありません。また、総代とは別に、総代会の運営や地域との調整を担う総代会役員が置かれています。このような仕組みは当社の例であり、ほかの神社でも同じとは限りません。
当社の総代は、春季大祭、夏越祭、秋季大祭などの準備と参列、神輿行列、茅の輪の設置、境内整備、地域への案内などに携わります。宮司だけでは把握しにくい各地域の事情や意見を神社へ伝え、反対に、神社からの案内を地域へ伝える役割も担っています。
一方、総代全員が宗教法人法上の責任役員であるわけではありません。当社でも、祭祀をつかさどる宮司、法人の事務を決定する責任役員、氏子地域を代表して奉仕する総代の役割を区別しながら、相互に協力して神社を支えています。
地域の生活や働き方が変化する中、昔と同じ負担をそのまま求め続けることは難しくなっています。当社でも、祭典の意義を守りながら準備や役割を整理し、総代の負担が一部の人へ偏らない奉仕の形を考えています。

当社の祭典と総代の奉仕については、「祭典と神事」でもご紹介しています。
参考にした主な資料
- 「関係団体一覧―全国神社総代会―」神社本庁公式サイト
- 「神道用語辞典―総代―」岡山県神社庁公式サイト
- 「代表役員及び責任役員」宗教法人法第十八条
- 「宗教法人の管理運営」文化庁
- 「神社本庁憲章」神社本庁
- 「カミ・人・祭りの原風景~神社のことば事典~(81)総代」(『山陰中央新報』令和7年6月5日掲載)
※本文の対話は、実際に寄せられた質問や一般に抱かれる疑問をもとに、内容を整理・再構成しています。
執筆・監修:稲荷神社宮司
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